POINT

・職能資格制度下における昇進管理とは、一定の職能資格等級に昇格した者の中から適性のある者を選抜し、役職階梯上の上位職位に就ける手続きのことである。

・能力主義人事を進めるためには、管理職という職位を、組織における権限と責任が付加された仕事上の役割と認識し、真に管理能力のある者を選任するといった適材適所を実践していくことが大切である。

・管理職を役割と見ることで、その見直しを進める役職任期制はそれなりの意味をもっている。その中で一律的な管理職定年制は組織活性化には役立つが、個人差を無視してしまう欠点がある。

昇進管理とは

職能資格制度における昇進管理とは、職能資格等級上の一定の基準に基づいて昇格した管理職適格者を対象にして、その中からさらに厳正な審査手続きによる選抜を進め、適性のある者だけを役職階梯上の上位職位に就ける人事異動の手続きです。

したがってここでは、企業ニーズに応じて管理職ポストの数が設定されるために、管理職適格のすべての者が管理職になれるとは限りません。職能資格等級上の管理職適格者の中から昇進審査を通じて適性のある者だけが選抜されるということに留意してください。

現実に多くの企業では、ポスト不足解消という処遇問題の解決のために多くの管理者を生み出し、その結果、組織の肥大化を招くなどの弊害をもらたしています。昇進管理は、管理職位をあくまで職能上の役割と理解し、「管理能力のある者」を選抜するといった企業経営ニーズに基づく適材適所の配置・異動管理の一環として行われるものであり、論功行賞的な処遇のための管理ではないことを確認する必要があります。

昇進基準の設定

管理職とは、組織における権限と責任が付加された仕事上の職位・役割であり、その仕事をうまくこなすためには、管理する能力をその本人がもっているかどうか、すなわち管理者としての資質を問わなければなりません。

一般的に、いわゆる管理能力として、専門的な知識・技術(technical skil)の他に戦路的思考(strategic thinking)、問題解決能力(problem-solving ability)、コミュニケーション能力(communication skil)、対人能力(human skill))などが問われます。そしてこれらの能力も、管理階層に応じて要求される比重が違ってくるために、評価ウエートを変える必要があります。昇進審査手続きとしては、こうした管理能力や適性を事前評価(=アセスメント)することが大切です。

そこで、精緻な理論を展開する斉藤清一氏の『トータル人事制度の組立てと運用』(産業労働調査所1990年)をよりどころとして、部長・課長・係長の昇進基準表の事例を示します。

絶対基準

①役職対応等級

役職対応の職能資格等級に在級していること。

②人事評価

能力評価を中心に成績(業績)評価を加味する。上位役職ほど成績評価のウエートが高まる。また、定着した能力を判定するために、最低でも2年間程度の継続的な評価内容を見る。

選考基準

①キャリアパス

管理者には幅広い視野や考え方が求められるので、異職種異動経験や同一部署内の異動経験をもつ者にする。

②能力要件

ヒューマン・アセスメントを取り入れて、問題解決能力・個人特性・コミュニケーション能力・対人スキルなどを見る。

③ 適性要件

基礎能力と性格の面から管理者向きかの判定を適性検査などを利用して行う。また、それぞれの役職にふさわしい見識や社会性なども見る。

アセスメント(評価方法)

①場面評価

与えられた演習問題に対し、決められた時間内に結論を出すグループ討議や、全員が与えられた同一のケースに対して問題や情勢を分析し、結論を文章化してグループメンバーの前でスピーチを行う分析発表演習などによって、各人の行動特性を観察・把握し、管理者としての能力や資質を評価する。

②論文

管理者としての問題意識と問題解決の具体性、創造性、視野の広さ、センスなどを分析的に評価する。

③役員面接

日常業務遂行に当たって、どのような問題意識と創造性をもって前向きに取り組んでいるか、その行動事実の確認をポイントにする。現実の問題を解決するステップの妥当性や効率性、業務遂行の原動力となる専門知識の深さ、知的応用力、分析力などを把握する。

推薦

①上司推薦

日常業務を通じての基本的なあるべき姿を通して、視野の広さ、部下から信頼され尊敬される人物か、期待される企画、開発、業務推進力が十分に発揮されるか、などが観察され報告される。

職能資格等級と役職の対応

職能資格制度を前提として昇進管理を行う場合、職能資格等級と役職との対応関係を明確にしておく必要があります。その際、適材適所の人事配置をできる限り柔軟に行えるように設定することが大切です。

役職の見直しと管理職任期制

管理職という職位を功労的な処遇のためのものではなく、企業組織運営上の役割と見ることによって、現在管理職に就いている者が本当にその職にふさわしいかを再考することができるようになります。職能資格制度上の職能資格等級では、いったん獲得した職務遂行能力は下がることはないといった前提で運用されていますので、職能資格等級上の降格はないのが普通です。しかし、管理職に必要とされる能力や適性は、時代の変化などに応じてその内容が変化することもあり、2年間ほどの期間を目安にしてその見直し作業が行われることが望ましいといわれています。そこで不幸にも不適格という決定をされた者は、降職(=たとえば部長から課長へ)となったり、無任者となるケースも出てきます。

一方、こうした役職見直しの手続きを制度化した「管理職任期制」を導入する企業もあります。この制度は、大きく次のような2つのタイプに分けることができます。

管理職任期制

①管理職再任制

役職就任後、一定年数(たとえば2年)が経過したときに、在任中の業績に基づいて再任するかどうかを再審査するタイプと、役職在任期間に関係なく、一定年齢(たとえば50歳)に到達したときに再任するかどうかを再審査するもの。

②管理職定年制

一定の年齢(=55歳程度が一般的)に達した管理職者は自動的に役職を外すとするもの。

これらの手続きの中で、管理職定年制は人事の停滞を回避するという点では有効なものかもしれませんが、個人差を無視しており、その結果、優秀な人材をスポイルする危険性をはらんでいます。

さらに大きな問題は、こうした役職見直しや管理職任期制を通じて無任者となった者の処遇です。これまでは、退任後は関連会社の役員や管理職として転出していくのが普通でしたが、現在ではこうした処遇が困難になりつつあります。したがって自社内で処遇していくことになるのですが、給与の場合、職能資格制度の下では「職位と処遇の分離」の原則が生きていますので、管理職手当といったものを除いて給与上の大きな格差はありません。一方、職位上の処遇では、人事制度を複線的に設計して専門職や専任職として活躍する場を提供する方策が一般的とされています。




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