育成とはそもそも何を指すか

マネージャー層になると、人材育成や部下育成という役割が期待されます。

しかし、職場での「育成」とはそもそも何を指すのでしょうか?

評価制度を「育成ツール」として活用するために、「どうなったら育成したと言えるのか?(ゴール)」「どうやって育成するのか?(プロセス)」に分けてポイントを押さえる必要があります。

どうなったら育成したと言えるのか(ゴール)

「会社として社員に求めるもの」ができるようになること。

各役割における目標の達成・問題解決

①各役割において目標を達成すること

②各役割において目標達成や問題解決のための構想や計画を策定し、実行す
ること

各役割における目標達成・問題解決を行うための能力の発揮・行動

①各等級に求められる能力を習得すること

②各等級に求められる能力を発揮・行動すること

まとめ

できなかったことができるようになり自律的に仕事を進めることができるようになることが「育成」であり、「成長」です。

「自分はマネージャーとして、部下の育成や部下に対して成長の働きかけができているか?」という問いはマネージャーとして常に自分自身に問いかけるべき質問です。

その質問に対する回答、つまりマネージャーとして部下育成ができているかの判断基準は、「部下の評価シートや等級基準の評価が前年よりも高くなっているかどうか」です。

部下との関わりというと、指導する、相談に乗る、褒める、叱る、信頼関係を築く、勇気づける、声をかける、応援する、フォローする……などさまざまな関わりがありますが、それらを言ってしまえば育成の手段に過ぎません(もちろん手段だから重要でないということではありません)。

部下育成のゴールは、「評価シートに挙げられている項目の中で、何ができていないかを確認・評価し、それらをできるようになること」です。そう考えるとシンプルではないでしょうか。

「各等級に求められる」という言葉がありますので、等級制度がポイントとなります。

等級制度の基本的な考え方

等級制度とは

多くの企業では、「各役割における目標達成・問題解決を行うための能力・行動の発揮」を「能力評価」「行動評価」「コンピテンシー評価」のような評価項目で評価しています。

この能力・行動の定義を階層別・等級別にまとめていくことになります。
これらは多くの企業で、

・等級別要件
・等級要件基準

などと呼ばれています。この「等級」とは、社員を階層に区分して格づけを行うもので、その体系を「等級制度」といいます。能力開発の方向性や社員のキャリアパスの指針となります。また、等級が処遇や報酬水準とも紐づくため、等級制度はいわば人事制度の屋台骨とも言えます。

等級制度の3つの考え方

・職能資格制度(職能等級制度)
・職務等級制度
・役割等級制度

日本企業では、社員が持つ能力を基準とした「職能資格制度」が一般的に採用されてきました。この制度では求められる能力、つまり職能のレベルによって等級の格づけが行われます。これは日本企業に特有の考え方であり、職務や職種を超えて設定できるため、スペシャリストではなく人事異動を前提とするゼネラリスト育成に重きを置く企業
で使い勝手が良かったのです。

一方、職務や職種を超えて統一した等級基準をつくる必要があり、どうしても表現の抽象度が高くなりがちで、厳密な等級基準としては使いづらく、年功序列的な運用になる問題点も生じます。これを社員の成長・育成や評価にどう活用するのかが考えどころです。

「評価→育成ツール」としての活用ポイントは、この等級基準を社員の成長・育成にいかに結びつけることができるかです。

最適な等級の数とは

まず等級の数ですが、大企業であれば、15以上の等級があることも珍しくありません。しかし、そこで等級ごとの基準を見たときにその違いが明確になっているかというと話が別です。

たとえば、10等級と11等級で求められる能力・スキルが大きく変わらないのであれば、その差は、実ではなく名によるものです。社員を序列化するため、あるいは細かな報酬の差をつけるために、基準が曖昧なまま無理矢理に10等級・11等級という名をつけるのです。その基準を使って成長・育成や評価をすることは難しいでしょう。目的を成長や育成におくのであれば、等級数を絞り込む必要があります。

シンプルな4層の格づけ

・一般社員
・チームリーダー層
・管理職層
・経営幹部層

自分の仕事を完結できるようになり、そこから部下・後輩が増えてチームとしての仕事を求められ、管理職としてマネジメントを行い、最終的には経営幹部として事業の責任者および全社的なマネジメントを行うという区分けです。

基本はこの4層とし、自社の実状に合わせてその中で細分化するとよいでしょう。

たとえば、「一般社員と言っても、やはり新卒1〜2年目と、5〜6年目ではまったく異なるので、ここを2つの層に分けよう。そうすると全部で5等級になる」、「管理職層も、課長クラスと部長クラスでは求められる視野も責任もまったく異なるので2つに分けよう。そうすると全部で6等級になる」という考え方です。

このように考えていくと、ほとんどの中堅・中小企業では5〜7等級以内で収まります。それ以上になると、求める能力・スキルに明確な差を言葉で表現しづらいという前述した内容に加えて、報酬の逆転現象、つまり下位等級の上限が上位等級の下限を上回るという現象が起こりやすくなります。

まとめ

求める能力・スキルを明確に表現しなければ、社員にとって何が求められるかが曖昧となるため、行動の促しや能力開発に活用しづらくなります。どこまで具体的に表現できるかが鍵です。

等級要件基準のベースは、ビジネスパーソンとして、どの業界、どの会社でも必要な能力・スキルです。一般社員であれば報連相ができるか、リーダー層であれば問題解決力があるか、管理職であればチームマネジメントができるかなどです。




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