人事評価の設計とは?設計の際の要素を解説

2024.05.29

・人事評価には、従業員の職務遂行能力を評価する能力評価、従業員の仕事の遂行度合いや程度を評価する業績評価、従業員の仕事に対する態度や取り組み姿勢を評価する態度評価の3つがある。

・職能資格制度下における人事評価の評価基準は、職能資格等級に応じて評価のウエートを変える必要がある。大きく分ければ、能力・態度を評価の中心とする層、能力を評価の中心とする層、業績を評価の中心とする層の3つである。

・人事評価における能力・業績評価の場合、従業員のさまざまな事情から一律的で機械的な評価は不満の原因になってしまう。

人事評価の評価項目

従業員を評価する場合、どのような点を評価するのかを決める必要があります。これを評価項目といいます。この評価項目には、一般的に大きく「能力」「業績」「態度」の3つがあり、評価項目ごとにさらに具体的な評価要素が組み込まれています。

具体的な評価要素

①能力評価

この評価は、職能等級基準書の各等級に求められる職能要件に基づき、従業員が知識・技能・理解力・判断力・交渉力などをどの程度保有しているかを評価する。そしてこの評価結果は、主として昇格・昇進・数育訓練ニーズの決定に利用される。

②業績評価

この評価は、評価期間中における仕事の量や質、達成すべき数値目標や課題など、職務遂行の度合いや程度を評価する。また、この評価は、能力評価が保有能力を評価するのに対し、いわば発揮能力を評価するといってもよい。この評価結果は、主として賞与・昇給の決定に利用される。

③態度評価

この評価は、評価期間中に従業員がどのような態度・行動・取り組み姿勢で業務を遂行したかを評価する。一般的には、責任性・積極性・挑戦性・協調性・規律性などの面から評価する。この評価結果は、昇格・昇進・昇給といった面で補完的な判断材料として利用される。

こうした内容をもとにして具体的な評価表を設計していく場合、たとえば能力評価にあっては、下位等級の一般職能層では仕事の知識や技能などの基本的な職務遂行能力の習得が、また、中位等級の中間指導職能層では下位等級者の指導育成力や日常業務における基本的な判断力などの習得が、さらに上位等級の管理職能層では、課や部を指導していく立場から、高度の管理指導力・交渉カ・判断力・問題解決力の習得を評価の重点に置くことが大切です。つまり、職能資格等級の階層に応じて評価される要素に違いがあることを認め、各階層に応じた評価表の作成を必要とするのです。

また、評価項目が能力・業績・態度の3つで構成されている場合、職能資格等級における職責や役割の違いから、これらの項目の比重の置き方も変わってきます。一般的に、下位等級から上位等級になるに従って、成果や実績などの業績項目の比重が増え、能力や勤務態度の比重が減ってきます。その基本的な考え方は、次のようなものです。

評価項目の比重の違い

①一般職能

組織人としての基本的な態度や行動を身につけるとともに、実務的で基本的な業務能力を習得する段階にある。したがって、評価の比重は能力・態度が中心になる。

②中間指導職能

職場の中堅的存在として、能力的伸長が期待される層。また、上司の指示の下、部下の指導育成を任されたり、判断力を発揮する業務も任される。したがって、評価の比重は態度から能力に移っていく。

③管理職能

課や部を管理指導する立場として、企業に貢献する実績が問われるようになる。したがって、責任の重い職位ほど、態度や能力より仕事上の成果そのもの、すなわち業績の比重が多くを占める評価になっていく。

能力主義人事が徹底していくに従って、またホワイトカラーを中心にした裁量労働制が普及していくと、長期的には態度評価がその姿を消し、人事評価は能力・業績評価の2つに集約されていくといった見方も、一方で有力なものになっています。

人事評価の評価基準

人事評価において、各項目・要素ごとに評価する場合、何段階かのランク付きのスケール尺度を用いるのが一般的です。最も単純なのが、3段階の基準です。たとえば「優れている」「まあまあ」「良くない」とか、「目標を上回った」「目標どおり」「目標を未達成」といったものです。

しかしこの尺度は、あまりにおおざっぱ過ぎ、微妙なニュアンスを取り込むのが困難です。また、昇給幅の決定や賞与配分の決定では、5段階基準としてたとえば「A、B2⁺、B、B⁻、C」といった内容のものを採用するケースが多いことから、人事評価でも5段階基準のほうが統一がとれているといえるでしょう。たとえば、「特に優れている」「まあまあ良い」「普通だ」「多少劣っている」「まったく不満だ」といったものです。

人事評価における情状の酌量

人事評価を実際に行う際、その公正さを求めるあまり斟酌する余地のない機械的な評価は、一見、公平なように見えますが、問題を生じる場合もあります。特に能力・業績評価の場合、機械的に行うぅとかなり深刻な問題が生まれてしまいます。いくつかの事例を紹介していきます。

機械的な評価で生じる問題

① 異動で配置換えになったばかりの従業員の能力評価

人事異動によって、たとえば営業から総務へと、これまでの職場とはまったく仕事内容がかけ離れた職場へ異動になった場合、本人には新職場における業務知識や技能はないに等しい。しかし、能力評価では業務上の知識・技能が問われるため、不利な評価になってしまう。こうした矛盾を回避するためには、最低1年間の評価を留保するといった配慮を行う必要がある。

② 外的要因のために目標達成できなかった場合の業績評価

急激な円高進行など、本人の努力では対応できない要因によって、たとえば売上目標が達成できなかった場合、機械的に評価すれば不利なものになってしまう。この場合、こうした不利な状況に遭遇しながらどのような挽回の努力をしたか、どのような手段を講じたかといった努力の姿勢を評価点として加味していく必要がある。

③ 長期的なアプローチで目標達成できなかった場合の業績評価

たとえば、来年度以降に売り上げが期待できる顧客の開拓に力を入れたために、本年度の成果が達成できなかった場合、不利な評価が出てしまう。こうした問題を避けるためには、目標管理的な手法を採用し、期初の計画段階で長期・短期の活動目標を上司と確認しておくことが必要である。また、期中に計画の見直しを行うなどして、新たなアプローチを取ることについて上司の承認を得るなど、きめ細かな対応をする必要がある。さらに、こうしたチャレンジ行動を加点評価することでカバーするのも一考である。

絶対評価と相対評価

絶対評価とは、斟酌する余地のない絶対的な基準に基づいて評価する方法であり、一方、相対評価は、評価する対象者の中での比較により、優劣を決定する方法です。

その際、人事評価の公正さといった点から見て、相対評価は基準があいまいなために、不公平感を生みやすいものです。たとえば、優秀な人間ばかりの職場で最低の評価を受けた者を、そうではない職場で最優秀の評価を受けた者と比較した場合、前者のほうが優秀であるにもかかわらず、低い処遇で対応せざるを得ないという矛盾を生じてしまいます。

こうした問題を避けるためには、全社共通の明確な絶対基準を設定し、統一的な評価を行う必要があります。特に職能資格制度を導入し、能力主義人事を推進していく場合には、職能要件と結びついた絶対評価が不可欠なものになるでしょう。

評価者の多様化

人事評価における評価者は直接の上司で、被評価者はその部下というのが最も一般的なあり方です。上司は部下の仕事内容や日常の仕事ぶりを最もよく理解していると考えられているためです。しかし最近、人事評価の客観性や納得性を高めるために、より多くの人間を評価にかかわらせる評価方法を導入する動きが拡がっています。

最近の傾向

①2次・3次評価

直接上司を1次評価者とし、直接上司の上司が2次評価を、さらにその部門の最高責任者が3次評価を行う。より多くの人間を評価者とすることで、より公正な評価の確保をねらう。

②自己評価(=自己申告)

自分で自分の評価を行う。自己評価は上司による1次評価の前に行い、その結果を上司に提出する。自己評価と1次評価の結果についてギャップがある場合、お互いに納得行くまで話し合い、評価結果の信類性を高める。

③ 多面評価

360度評価ともいわれる。上司以外に同僚・部下・他部門の者、さらには取引業者からの評価も行う。より広い視点を取り入れることで、より公正な評価を目指すといったねらいがある。一方で部下が上司の悪口を好き放題書く可能性があるため十分な配慮が必要である。

まずは簡単に導入できる人事評価システムを取り入れてみましょう

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ロイヤル総合研究所

人事コンサルティングチーム