基本給の昇給はどうやって決めるの?

2023.09.20
基本給の昇給

会社を親から引き継いだ若手社長からよく聞かれる質問があります。「社員の給与ってどうやって決めるのですか?今までは先代が頭の中ですべて把握して計算していたから自分には決めることができません。」という質問です。これは特に中小企業でよくあることです。これまで人事評価制度や賃金制度を導入していない企業が事業承継するときによく起こる問題点です。

そこで今回は基本給の昇給方法について解説していきます。

基本給の昇給方法は会社によって異なりますが、よく使われる方式として以下の2つがあげられます。
1.テーブル方式
2.乗率方式
それぞれの特徴をふまえて解説していきたいと思います。

※基本給の中に生活保障給(年齢給や勤続給)が含まれることもありますが、解説が複雑になってしまうためその点は省略します。今回の解説は、基本給の主要部分である本給や職務給に使われている方式です。

テーブル方式

テーブル方式は、等級別の基本給テーブルを作成し、人事評価に基づいて昇給する方法です。

基本給テーブル方式

この方式の特徴は以下のとおりです。

メリット

  • 昇給額が明確でわかりやすい。
  • 自分が今どのポジションにいるのかわかりやすい。

デメリット

  • テーブルの作成や更新に時間がかかる。
  • 金額が明確になっているため柔軟性に欠け、変更が難しい。

事例

この方式を使った昇給事例は以下のとおりです。例えば、半期ごとの評価における昇給号俸を下図のように設定します。上期がB、下期がAだった社員の場合、評価Bの昇給号俸1+評価Aの昇給号俸2を合わせた3号俸が昇給する号俸となります。したがって、元の等級号俸(S2等級3号俸)から3号俸昇給したS2等級6号俸が次期の基本給となります。

基本給テーブル方式事例

このテーブル方式はわかりやすいため、多くの中小企業で採用されています。

乗率方式

乗率方式は、各等級ごとの基本給の上限と下限を決め、その範囲内で昇給する方式です。昇給額は人事評価に基づく率を乗じて算出します。

基本給乗率方式

この方式の特徴は以下のとおりです。

メリット

  • テーブル方式よりも柔軟性が高く、個人の能力や業績に応じた給与設定が可能
  • 昇給率は業績や労使交渉によって決めるため柔軟性が高く、リスクが低い

デメリット

  • 昇給額が不明確であり、不安や不満が生じやすい。

事例

この方式を使った昇給事例は以下のとおりです。会社業績や労使交渉によって昇給率を以下のように設定した場合について説明します。
例1:人事評価が上期B、下期Aだった社員の場合、B評価の1.0%とA評価の1.5%を合わせて2.5%が昇給率となります。したがって基本給20万円×2.5%の5,000円が昇給額となります。
例2:人事評価が上期A、下期Aだった社員の場合、A評価の1.5%が2回分で3%の昇給率となります。したがって基本給27.5万円×3%の8,250円が昇給額となるところですが、この社員はS3等級で上限額が28万円です。8250円の昇給では28万円を超過してしまうため、上限額28万円を超過しないように5,000円が昇給額となります。

基本給乗率方式事例

この方式は大企業の賃金制度によくみられる方式です。大企業は従業員が労働組合に加入しているケースが多くあります。毎年、昇給時期になると労使交渉が始まって昇給額が妥結されます。毎年のように昇給額が変化する場合はこの乗率方式が運用しやすいからです。もちろん、中小企業でも柔軟性を重視して導入している企業も少なくありません

どちらがおすすめ?

これ以外にも複雑な計算方式を採用している企業もありますが、私はこの2つのいずれかを推奨します。会社の制度というのは社員が理解しやすいことが大前提です。複雑な制度は混乱を招き、正しく機能しません。この2つの方式がどちらもわかりやすい方式であり、かつメリットが多いため、これらの方式を推奨します。

いずれの方式を採用するのかは各組織の方針によりますが、わかりやすさや明確さを重視する場合はテーブル方式、運用の柔軟さを重視する場合は乗率方式を推奨します。自社の事情や目標に合わせて最適な方法を選択してください。

ただし、どの方式も人事評価が適切に行われていることが前提です。人事評価が行われていない場合は賃金制度の作成と同時に人事評価制度を作成することを推奨します。

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