目次
人事評価と人材育成の関係性
目標管理/評価制度というマネジメントツールを活用してマネジメント活動を推進し、社員の成長を後押しした結果、経営成果と業績向上につなげるという目的を実現するために経営レベルのサイクルを次のように補います。
1.人事制度(等級基準、評価項目、目標設定)によって社員に求めるものを明確にする(期待要件の明確化)
2.社員に求めるものができるようになる(=達成/成長)ように、
・求めるものに対して、何ができていて何ができていないのかを共有する(人事評価)
・ギャップを埋めるため、目標達成するためにどうするかを検討する(育成計画、課題、行動計画)
・ギャップを埋める(育成計画の実行による育成/成長、行動計画の実行による目標達成)
3.社員に求めるものを実行/達成することで業績が向上し会社が成長する(会社の成長)
人事評価の役割
多くの場合、評価についての考え方と育成についての考え方は別の場で語られがちです。
評価制度と育成制度/教育制度を分けて取り組んでいる会社がほとんどですが、この2つは必ずセットで捉えなければなりません。
社員に求めるもの=人材育成/教育の目標であり、それに対して現状があります。
この現状を測るのが「人事評価」です。
求められているものに対して、何ができていて何ができていないのかを評価します。
できていないものが求められているものとの差であり、育成や教育はその差、いわゆる隔たりを埋めるための手段です。
育成や教育というと研修やOJTで指導するというイメージが湧きますが、本質は社員に求められるものと現状との差を埋めることであり、研修や0JTはそのための手段にすぎません。
教育計画/育成計画を立て、それに沿って教育がなされ、できていないものができるようになる(=求められるものができるようになる)という状態が、本人にとっての成長であり、上司にとっての育成です。
その状態を実現できてこそ、「成長した」或いは「人材育成に力を入れた」と言っていいでしょう。
教育や育成の前提は社員に求めるものが明確になっていることであり、それが等級基準や評価項目です。
等級基準や評価項目に対して、できていないものをできるようにするのが教育・育成・成長です。
評価と育成を連動させるために必要なこと
多くの会社では以下のように、評価と育成が連動できていないケースが見受けられます。
・評価制度が査定としての機能のみで、公平な評価からの納得感のあるフィードバックに重点が置かれている
・教育は研修と現場任せの名ばかり0JTの実施のみ
これでは評価と育成はまったく連動できていません。
評価と育成を連動させるためには次のような流れが必要です。
◆評価とフィードバックによって求められるものに対して何ができ何ができていないかを確認する
◆できていないものをどのようにできるようにするのかを検討し成長課題を設定、育成計画を作成する
◆成長課題への取り組みや育成計画の実行をスタートする
部下と向き合う中で実践できているか、また人事部としては全社的に実践できているかを確認するとともに、実践できていないならば原因を検討し実践するための組織としての仕組み作りを進める必要があります。
次のような課題があったとします。
①人事評価/面談のガイドブックや人事イベントの告知の中でそもそも評価と育成がセットであるということや具体的なToDoを評価者に伝えているか?
②評価シートに育成課題/育成計画などを記入できるようなフォーマット上の工夫がされているか?
これらを各評価者任せにするのではなく組織としての仕組み作りを担うのが人事部の役割と言えるでしょう。
人事評価を行うべきタイミング
「評価と育成がセット」であることを踏まえて次に着目したい点は「順序」です。
企業の年間のPDCAサイクルからすると、
・期初に当期の目標設定/行動計画や教育計画/研修計画を立てる
・期中にそれを遂行/実行する
・期末に評価する
というイメージがありますが、PDCAのスタートは「期末」でなければなりません。
評価と同時にできていないものをできるようにするため、また更に成長させるためには今後どうしていくのかどのように経験を積むかという未来について考える場です。
つまり人事評価は「期末の儀式」ではなく、「期初のスタート」です。
期末の儀式と考えると、過去の査定からの結果のフィードバックで完了してしまいます。
過去のこと=終わったことと捉えると評価や面談に取り組むモチベーションが下がりますが、未来のこととして捉えると前向きに取り組めるものです。
評価と育成がセットで運用できているかの判断基準は、未来に向けての会話が多くなっているかどうかでしょう。
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ロイヤル総合研究所
人事コンサルティングチーム