POINT

・人事労務情報とは、人事労務管理に関するあらゆる情報を意味しており、自社の現行の人事労務管理施策の有効性の評価やその問題点の洗い出しに必要な資料である。また、人事労務管理の運用に整合性をもたせるためにも必要になる。

・人事労務情報の中の外部情報は、全般的な人事労務管理の動向を知ると同時に、自社の人事労務管理水準を特定するのに有効である。

・人事労務情報の内部情報としての職務情報と人事情報は、能力主義人事を進める際の前提であり、特に「職務と人との動態的な適合」を実現するために不可欠な情報である。

〔1〕人事労務情報とは何か

人事労務管理の具体的な施策内容が十年一律不変であるということは、まず考えられません。人事労務管理は常に環境の変化にさらされており、ある時期には有効であった施策も、時代が変わり環境が変化することで有効性に陰りが現れ、その機能的な陳腐化を避けることはできません。

自社の人事労務管理の機能的有効性を検討していくためには、人事労務にかかわるさまざまなデータを組織的に収集していくことが大切です。たとえば、広く産業界一般の人事労務管理動向、その中でも特に同業他社の人事労務管理にかかわる諸統計・資料を収集して自社の現行施策と比較・分析したり、あるいは従業員の「モラール・サーベイ」(morale survey)などを通じて自社の現行施策の有効性を問う作業などがあります。そしてこれらの作業を通じ、もし著しく劣った事実が浮かび上がってきたとすれば、それらの点を自社の人事労務管理改善の課題として特定することができるのです。

こうした個々の企業の人事労務管理制度・手続きの改善のために必要な事前の手続きが「人事労務調査」(personnel research)であり、そのために収集される人事労務管理にかかわる情報のことを広く「人事労務情報」(personnel information)と呼んでいます。この場合、人事労務情報は大きく外部情報と内部情報に分けることができます。

① 外部情報

・労働関係諸法、労働経済の実態に関する政府諸官庁の調査資料
・産業における、特に同業他社の人事労務管理動向に関する資料
・人事労務管理の専門情報誌から得られる資料

② 内部情報

・自社内の職務に関する情報(=職務調査から得られる職務情報)
・自社の従業員に関する情報 (=人事評価などから得られる人事情報)
・自社の人事労務監査やモラール・サーベイから得られる情報

これらの情報の中で、外部情報としての政府諸官庁が取りまとめる人事労務諸統計は、広く産業界一般の人事労務管理動向と比較して、自社の現行の人事労務管理水準を特定するのに役立ちます。また同業他社の人事労務管理動向を知る資料は、技術装備の水準が同じである場合には、人事労務管理全般の整備と運営状況の適切度の違いが企業業の格差となって現れるために、特に関心を寄せるべき内容です。

さらに、人事労務管理の専門情報誌は、最新の人事労務管理動向を知るのに有効な情報源です。現行の人事労務管理が大きな問題もなくうまく機能している場合であっても、そこにより効果的な施策が開発されれば、それを積極的に取り込む努力を行うことは、人事労務管理の機能的有効性を向上させる重要なポイントです。特に新たな施策の成功事例は、自社の制度修正を考える際の有益な情報になります。

一方、内部情報としての「人事労務監査」(personnel audit)や「モラール・サーベイ」は、現行の人事労務管理の制度・施策などについて、「その施策が妥当であるか」「その施策の運用が適切であるか」「施策の運用が所期の成果をあげているか」などを知り、その評価結果を人事労務管理の全面的な合理化に向けて今後の対応に活用していくものです。なお、この調査資料の価値を高めるためには、時系列的な観点から定期的に実施し、その変化の動きを知ることが大切です。

〔2〕人事情報と職務情報

人事労務情報における内部情報としての職務情報と人事情報は、人事労務管理の日常的な運営上特に重要なものです。というのは、これらの2つの情報は、雇用・教育訓練・賃金といった人事労務管理の基幹的な職能の制度設計や運用をより効果的なものにするのに役立つだけでなく、従業員の配置・異動にかかわる「職務と人との動態的な適合」を合理的に進めるために欠かすことのできない必須の情報になるからです。

たとえば、ある職務に関して、その職務遂行に必要な人的能力としての職能要件が明確に把握されていればこそ、その職務に対する従業員の適切な配置基準を設定することができます。また逆に、特定の従業員個人に関して、現有の職務遂行能力が明確に把握されていればこそ、その従業員に対して適切な職務への配置が可能になるのです。このように、職務が要求する人的資格要件と従業員が保有する職務遂行能力の内容との突き合わせによる職務配置が適正配置としての「職務と人との動態的な適合」になるのです。

もともと、こうした職務を固定してそこに人間を配置していく職能合理主義的な考え方は職務中心の人事労務管理制度を構築する欧米的な発想ですが、一方、今日の日本では、職能資格制度を導入している企業が一般化しており、こうした企業では職務調査を通じて職種別・等級別に職能資格基準を明記した職能等級基準書(=職能要件書)が整備されているはずです。したがって、ある特定の仕事に人を配置する場合でも、その職務遂行に必要な人的能力が明記されていますので、そうした人的能力を有する従業員を発見・配置することで「適材適所」の人員配置を行うことが可能です。

能力主義人事労務管理は、能力や業績を基準に処遇するといった面が強調されがちですが、こうした「職務と人との動態的な適合」も能力主義人事の重要な局面です。

今日では、従業員の異動・昇格・昇進・研修歴・海外経験といった社内職歴や人事評価・自己申告・キャリア開発計画といった職能歴を総合的に取りまとめた「人的資源目録」(human resource inventory)あるいは「スキルズ・インベントリー」(skils inventory)としてデータベース化された人事情報が整備されつつあります。この人事情報を活用することで、より効率的に「職務と人との動態的な適合」を推進することができます。またこの人事情報は、現在の自社内にどのような人材が確保されているか、あるいは新たな事業展開に際し、どのような人材が不足しているかを瞬時に教えてくれます。こうした数値的事実情報を基礎に置くことによって、確度の高い中・長期的な要員計画や人材育成計画が可能となり、さらには機動的な「戦略的中途採用」も効率的に行っていけるようになるのです。




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