中央集権・トップダウンだけでは環境変化に対応できない

2024.02.27

業績評価は「組織に対する評価」と「個人に対する評価」の二つに分けて行うことが多いです。
評価に対する納得性を確保するため、或いは組織業績の測定のために組織を適切に設計する必要があります。
業績評価制度を有効に機能させるための組織のあり方について考えていきます。

①組織風土を変えるための方法
「チャレンジ精神の高いものにしたい」「主体性のある社員になってもらいたい」「チームワークを大切にしてほしい」などといった組織風土に変革をもたらすには組織風土といった“ソフト”に直接手を加えるのではなく、組織機構や仕組みといった“ハード”を変えることで実現が可能になる。

②業績評価を前提とした組織運営における分権化と権限委譲の重要性
組織運営における権限委譲が顧客指向の経営に与える影響、相対目標を中心とした納得性の高いマネジメントにおける意味、業績評価における納得性との関係。

③製造部門や管理部門の適切な業績評価方法
損益での管理が困難な製造部門や管理部門などの業績評価を納得性の高い方法で行う。

風土や意識というものの正体

風土や意識など目に見えないソフトを変えることによって組織が活性化し業績に大きく貢献するということはよくあります。
ですが「意識を高めるように」といって高まる意識などありません。
意識を変えるには変えるための取組みが必要でです。
聞かされる側も「意識を高めたいのはヤマヤマなんだけど」と内心思っているかもしれません。
意識や風土などの組織におけるソフト面は長年にわたる構成員の行動の積み重ねによって形作られています。

組織のソフトはハード面と構成員の行動の積み重ねで変わる

風土や意識などのソフトは直接的に変えることはできません。
変えるためにはハードを変えることが必要になります。

世界的に有名な経営コンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーは、企業組織を構成する要素を7つのSで表現しています。
4つのSがソフト、3つのSがハードという構成です。

【ソフトの4S】
1.Shared value(共通の価値観)
2.Style(経営スタイル)
3.Staff(人材)
4.Skill(技術・技能)

【ハードの3S】
5.Strategy(経営戦略)
6.Structure(組織機構)
7.System(システム・仕組み・制度)

ソフトの4つは直接手をくだすことで短期的に変えることは難しいですがハードの3つは直接的に手をくだして変えることが可能です。

経営戦略がシステムや組織を決定づけます。
必要な人材やスキルを規定し、さらに会社の価値観を生み出し、組織固有のスタイルを形作ります。
このように意識や風土といったソフトを変えることはハード、つまり仕組みや組織を変えることでしか実現しないというわけです。
ハードを変えることで組織に所属する人たちの行動が変わる。
その積み重ねこそが組織風土や意識などといったものをつくり上げていきます。

行動分析学から見る

心理学の一分野である行動分析学という学問分野でも明らかにされていますが、行動分析学で「道徳心はどうやって芽生えるのか」という興味深いテーマが研究対象になったことがあります。
道徳心は人が生まれながらに持っているものではなく、育ってきたプロセスの中で形成されてきたものと考えられます。
ではそのプロセスとはどのようなものでしょうか。

行動分析学では人(他の動物も)の行動の直前と直後との環境変化に注目します。
その環境変化によって行動は強化(益々やるようになる)されたり、弱化(やる頻度が減少する)されたりすると説明しています。

例えば、ゴミを道に捨てた直後に注意を受けたとします。
これは行動の直前と直後で環境に変化があったことになります。
この環境変化によってゴミを道に捨てるという行動は弱化されます。
ここでひとつ注意しなければならないのは、注意を受けるのが嫌で行動をやめようと考えてやらなくなる、ということももちろんありそうです。
しかし行動分析学ではこのような環境変化(=刺激)がより心理の奥深いところに作用して本人も気づかないうちにその行動そのものをやらなくなる、つまり習慣づけられると説明されています。
その結果、ゴミを道に捨てるという行動そのものが不快になり気づかないうちにやらなくなるということに繋がります。

このような環境変化(=刺激)が与え続けられることで特定の行動が強化されたり弱化されたりし組織風土が形作られていくと考えることができます。

組織風土や意識を変えるためのプロセス

以上のことから組織風土や意識を変えるためには次のようなプロセスが考えられます。

①仕組みを変える
例えば、プラスの評価が与えられる行動を明示しその行動の頻度が高かった者にさまざまな形で報酬を与える。そうすることで顕在意識下でその行動をするように変化する。

②行動が習慣づけられ組織風土となる
行動が評価されるということが意識され一定頻度以上に高まると仕組みとしての報酬がなくてもそのような行動が習慣づけられ組織風土となり意識に変化が起きるようになる。

こうして報酬制度などの仕組みとはもはや無関係に組織風土が形成され一定の行動が持続的に行われるようになります。
業績評価などの仕組み(=ハード)は本来このように一定の好ましい風土などが組織に定着する契機として活用するべきでしょう。

ゲストサービス熱狂カード

ディズニーで「ゲストサービス熱狂カード」という仕組みが取り入れられていることは広く知られています。

◆ゲストサービス、チームワークについて一定の基準を満たした行動をしたらカードがもらえ渡された人は自分の名前を書いてボックスに入れる。

◆月に1回ボックスから抽選を行う。
つまり多くのカードをもらった人ほど当たる確率が高くなる。

◆どういう行動が対象となるか明確に定義して研修を行っている。

〈サービス>
・常に相手の目を見て笑顔を忘れない
・ゲストの期待を上回る仕事をしゲストとの触れ合いを求める
・常に最高のサービスを提供する
・すべてのゲストをひとり残らず心から歓迎する
・最善を尽くし妥協しない

〈チームワーク>
・与えられた仕事以上のことをやる
・協調精神を忘れない
・ゲストや同僚と積極的にコミュニケーションを図る
・ゲストに魔法をかけ続ける

このようなことが日常的に行われることで、ディズニーにはサービスとチームワークについての理想が少しずつそして確実に組織風土として定着しています。




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